「欲しいけど、どうしようかな…」
商談の場で、こんな風に迷うお客様は少なくありません。
営業マンにとっては、あと一歩で決まる大切な場面。
しかし強く押しすぎれば不信感につながり、引きすぎればそのまま帰られてしまう
――そんな難しい局面です。
そこで本記事では、北海道で9年間店長を務め、
延べ数千件以上の商談に立ち会った筆者が実際に使ってきた
「迷っているお客様の心に響く一言」 をまとめました。
心理学の知見や営業現場の体験を交えつつ、
自然に「決めてよかった」と思っていただける後押しの言葉をご紹介します。
「一番後悔されるのは、“何もせず帰ったとき”なんです」

お客様の恐れに寄り添う言葉の力
人は「損をしたくない」という心理に動かされやすいものです。
購入を迷うとき、多くのお客様が心の中で感じているのは「もし間違えたらどうしよう」という不安。
しかし、その裏側には「決められない自分を後で後悔するのではないか」という恐れも存在します。
「何もせず帰ったときが一番後悔する」という言葉は、その気持ちを代弁する一言です。
営業が理解している姿勢を示せば、共感と信頼を得ることができます。
“行動しなかった後悔”を避ける思考誘導
心理学でも「人は失敗よりも“やらなかったこと”を後悔する傾向が強い」と言われています。
お客様に「行動しなかった後悔の方が辛い」と気づかせることで、
今の行動に意味を見出しやすくなります。
この時に重要なのは、脅すような言い方ではなく、未来を想像させながらやさしく伝えること。
そうすれば自然に「じゃあ決めようかな」という気持ちに傾いていきます。
即決への心理的ハードルを下げる技術
「買うかどうか」という二択で迫ると、お客様は防御的になります。
しかし「後悔を避けるかどうか」という選択肢を示すと、心理的ハードルがぐっと下がります。
営業がやるべきは「選択肢の提示」ではなく「選びやすい思考の流れをつくること」です。
「このバイク、〇〇さんも同じ条件で選ばれてました」
類似した購入者の存在が与える安心感
人は自分に似た人の行動に影響を受けやすい性質を持っています。
たとえば同じ年代、同じライフスタイルの人が同じ選択をしたと聞くと、
「自分も大丈夫だ」と安心するのです。
これは心理学でいう「社会的証明」の一例です。
商談で「先週も同じ条件で決められた方がいました」と伝えるだけで、お客様の不安は和らぎます。
「自分だけじゃない」を伝えるストーリーテリング
実際のお客様の体験談を交えて話すと、
単なるセールストークではなく「リアルな選択」として響きます。
たとえば「同じく初めての大型バイクで不安に思われていたお客様も、
このモデルで安心してツーリングを楽しんでますよ」と具体的に伝えれば、
「自分もその未来をイメージできる」と思っていただけます。
信頼を築く共感の設計
注意点は「比較対象を誇張しないこと」です。
あくまで事実ベースで、「似た境遇のお客様が決められた」というシンプルな伝え方が効果的。
お客様の判断を後押しする「安心材料」として伝える姿勢が信頼につながります。
「決めるのって不安ですよね。実は僕も…」
共感が生む心理的安全地帯
お客様が迷っているときは、不安を口に出すのも勇気がいります。
そこで営業側から「不安になるのは当然ですよ」と言葉をかければ、
お客様は安心して本音を話しやすくなります。共感は「安全地帯」をつくる一言なのです。
人間味を感じる自己開示の効果
営業マンが自分の経験を語ると、お客様は「この人も同じ気持ちを経験してきた」と感じます。
たとえば「僕も初めてのバイクを選ぶときは、正直すごく迷いました」と素直に話すと、
お客様は「この人に相談していい」と思いやすくなります。
不安を“普通のこと”に変える言い回し
「不安なのはあなただけじゃない」「誰でも迷うんですよ」という言葉は、
不安を異常ではなく「当たり前」に変えます。
結果、お客様は「自分も普通なんだ」と安心し、前に進みやすくなるのです。
「買う前提で動くと、不思議と見えてくるものがありますよ」
想像させる「行動の力」
お客様が迷っているときこそ、「買った後の未来」を具体的に想像させるのが効果的です。
「納車後はまずどこに行きたいですか?」と問いかけるだけで、
お客様は「実際に乗っている自分」を頭の中に描きます。
検討モードから実行モードへのシフト
「買うかどうか」で止まっているお客様を、
「買ったらどうするか」というフェーズに移すことがポイントです。
思考が「所有後の楽しみ」に向いた瞬間、意思決定は自然に加速します。
小さな未来体験を促す提案の作り方
「新しいヘルメットも似合いそうですね」「納車の日は写真を撮りましょう」など、
小さな未来のシーンを具体的に話すことで、お客様はワクワク感を覚えます。
この「未来の疑似体験」が決断の後押しになります。
「今日決めなくても大丈夫。でも…」
「焦らない営業」の安心感
お客様が最も警戒するのは「急かされること」です。
そこで「今日決めなくても大丈夫ですよ」と伝えると、一気に肩の力が抜けます。
この一言は「あなたのペースを尊重しています」というメッセージであり、信頼感を生みます。
営業が「今すぐ契約してほしい」と焦っていないと伝えるだけで、心理的な壁が下がるのです。
行動動機としての「今」を強調する方法
安心感を与えつつも、その後に「でも今日なら…」と続けることで、
自然に「今決めるメリット」を提示できます。
たとえば「在庫が残っているのはあと1台です」「今日なら希望色の取り置きができます」
といった具体的な理由を添えることで、押し売り感なく背中を押せます。
自然なクロージングへの誘い方
ポイントは「選択権をお客様に残すこと」。
無理に迫るのではなく「判断材料として知っておいてください」と伝えるスタンスです。
これにより、お客様は「自分で選んだ」と納得しやすくなります。
「ご家族やご友人は何て言ってますか?」
外部の意見で安心したい心理を刺激
大きな買い物では「身近な人の意見」を重視するお客様が多いものです。
「ご家族やご友人はどうおっしゃってますか?」と尋ねることで、
安心の判断基準を引き出すきっかけになります。
これは「一緒に考えてくれる人」という印象を与え、信頼を深める効果もあります。
本音が出るきっかけの作り方
この質問をきっかけに「実は妻が反対していて…」など、
お客様が抱えている本音や障害が出てきます。
営業はそれを解決できる提案を示すことで、より具体的に後押しが可能になります。
ヒアリングを兼ねた質問だからこそ、表面的な迷いではなく本質的な悩みに近づけるのです。
「共感+ヒアリング」の二重効果
ただ聞くだけでなく「奥様が心配されるのも自然ですよね」と共感を添えることで、
さらに安心感が増します。
ヒアリングと共感を組み合わせることで「この営業は自分の味方だ」と感じてもらえるのです。
「悩んでる時点で、もう“欲しい気持ち”はあるんですよね」

悩み=購入意思の裏返しというフレーミング
「悩む」という行為は、「欲しい気持ちがあるからこそ」生じるものです。
この一言を伝えると、お客様は「あ、自分は欲しいんだ」と気づきます。
否定的な迷いを、肯定的な「意思の証拠」に変換できるのです。
自己認識を促すメタ認知の技法
「欲しいから迷う」という構造を言語化してあげることで、
お客様は自分の本心を理解しやすくなります。
心理学でいう「メタ認知」を促す一言であり、結果として前向きな選択を導きます。
意思決定の整理サポートとしての一言
営業の役割は「背中を押すこと」だけでなく「考えを整理すること」にもあります。
このフレーミングを示すことで、お客様は自分の気持ちを肯定し、納得して決断できるのです。
「今のままでも困らないかもしれません。でも…」
現状維持バイアスを突破する問いかけ
人は「現状のままが安心」と思いがちです。
そこで「今のままでも困らない」と認めることで、お客様の心を一度落ち着かせます。
このスタンスが逆に「営業の押しつけではない」と伝わり、信頼を得やすくなるのです。
「未来の可能性」を提示する話術
その後で「でも、もしこれを手に入れたらもっと快適になりますよ」と未来のメリットを示すと、
自然に行動の理由が浮かび上がります。変化を恐れる気持ちを「期待」に変えることが大切です。
変化への感情的動機づけ
「もっと楽しくなる」「もっと安心できる」といったポジティブな未来像を描くことで、
現状維持よりも変化を選ぶ価値を感じてもらえます。
「迷ったときに後押ししてくれたのは“人”でした」
体験談で親近感を醸成する
「私自身が迷ったとき、後押ししてくれたのは人の言葉でした」
と営業自身の体験を話すことで、お客様は親近感を持ちます。
体験談は理屈ではなく感情に響く力を持っています。
「人の後押し」=信頼の証を伝える
「最終的に信じたのは人でした」と伝えると、
「この営業も同じ立場で背中を押してくれる」と感じてもらえます。
商品ではなく「人」で決めるという考え方は、お客様の安心感につながります。
個別性と共感のバランス設計
抽象的な話ではなく「あなたの場合なら」と個別に言い換えると、
さらに説得力が高まります。共感と具体性の両立がポイントです。
「どの選択肢でも、僕は応援します。でも…」

押しつけない信頼構築の前提
「買っても買わなくても応援します」という一言は、営業への警戒心を取り払います。
お客様は「自分の意思を尊重してもらえる」と感じるからです。
「あなたが納得できるまで」はお任せします宣言
この姿勢は「安心して考えていい」という余裕を与えます。
その余裕こそが「よし、決めよう」と思わせる要因になるのです。
「決めた後の気持ち」にも寄り添う姿勢
「決めた後もずっとサポートします」と伝えると、購入後の安心までイメージできます。
契約がゴールではなく、関係のスタートだと示すことで長期的な信頼を築けます。
まとめ|最後の一押しは「背中を押す優しさ」
「買わせる」ではなく「決められるように支える姿勢」
営業の本質は「売りつける」ことではありません。
お客様が自分で納得し、後悔のない選択ができるように支えること。それが信頼を生む営業です。
押さない・焦らせない・寄り添う三原則
「押さない」「焦らせない」「寄り添う」。この3つを守れば、お客様は安心して決断できます。
大切なのは「お客様が自分で決めた」と思えるプロセスです。
一言が背中を押す瞬間の作り方
営業マンの一言は、お客様の人生を変えるきっかけになることがあります。
「この人に背中を押されてよかった」と思ってもらえるように、
一言一言に誠実さを込めて伝えましょう。
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