〜ただ話すだけの営業から、刺さる提案ができる営業へ〜
はじめに|「話が上手い」だけでは売れない時代
「話すのが得意だから営業に向いている」
そんな風に言われる時代は、もう終わりを迎えつつあります。
今、お客様が求めているのは、“自分のことを理解してくれる営業”。
つまり「話す」よりも「考える」営業マンの価値が高まっているということです。
中でも、売れる営業マンに共通しているのが、**“仮説力”**を持っているという点。
「きっとこの人はこう考えているだろう」
「おそらくこんな背景があるから、今この商品に興味を持っている」
このように、お客様の心理や行動の裏側にある“理由”を読み取り、事前に仮説を立てる力が、商談の質を大きく左右します。
この記事では、営業歴15年・店長歴10年の私が実践している「仮説力の鍛え方」と、実際の現場でどう活かすかを、具体例を交えながらお伝えします。
なぜ、仮説力が営業に必要なのか?
営業は情報戦です。
目の前のお客様が、
・どんな不安を持っているか
・何を求めているか
・何が決め手になるのか
すべて教えてくれるわけではありません。
むしろ「何に悩んでいるのか自分でもわかっていない」というお客様が大半。
そこで役に立つのが仮説力。
表面の言葉にとらわれず、その背後にある**“本音”や“真のニーズ”を探る視点**があれば、最初の一言から話の流れが変わります。
よくある失敗例:「聞いてから考える」では遅い
多くの営業マンは、「まず話を聞いてから対応しよう」と考えます。
もちろん、傾聴は大事です。
しかし、何も準備せずに話を聞いていると、
・会話の主導権を握れない
・反応に一貫性がなくなる
・相手に「頼りない」と思われる
結果として「ただ話を聞いただけ」で終わってしまい、商談が深まりません。
売れる営業は違います。
事前にお客様の心理や行動を予測し、いくつかの仮説を用意した上で、会話に臨みます。
すると、質問の質が変わり、提案の切り口も深まるのです。
仮説力を高める3ステップ
ステップ1:お客様を観察し、「前提」をつかむ
まずは目の前のお客様の情報をもとに、「今どういう状態なのか?」という“前提”を整理します。
たとえば:
- どんな服装・雰囲気か?
- 一人で来店か?家族と一緒か?
- 売り場のどこで足を止めたか?
- どんな質問をしてきたか?
これらをヒントに、「この人は初心者か」「以前にバイクに乗っていたかもしれない」「価格に敏感なタイプかも」といった予測が立てられます。
ステップ2:パターンを蓄積し、「仮説」を立てる
日々の接客で得られる“お客様の反応パターン”を積み重ねることが、仮説力を育てる最大の武器になります。
たとえば:
- 親と一緒に来る20代の男性は、即決しないことが多い
- 質問の最初に「価格は?」と聞く人は、他店と比較している傾向がある
- 自分の過去のバイク歴を語り始める人は、こだわりが強く、提案にストーリーが必要
こうした“行動の傾向”を自分の中にデータベース化していくことで、精度の高い仮説が作れるようになります。
ステップ3:仮説を問いかけで検証する
仮説を立てたら、次は会話の中でその真偽を探っていきます。
例:
「以前にも同じジャンルのバイクに乗られてましたか?」
「普段どんな用途でお使いの予定ですか?」
「他にも気になってる車両ってありますか?」
このような問いかけで、仮説が当たっていれば深い共感が生まれますし、違っていれば軌道修正もできます。
仮説をもとに投げかけた質問だからこそ、お客様も“ちゃんと見てくれている”と感じてくれるのです。
実例:仮説が刺さった成功パターン
ある日、作業着姿の30代男性がフラッと店に来ました。
他のスタッフは「たぶん冷やかしだな」と判断していましたが、私は“平日昼間に一人で来る=仕事の合間か、勤務シフトが特殊な仕事の方”と仮説を立てました。
声をかけると「今日は夜勤明けで…」とのこと。
そこで「夜勤後って乗り物に乗りたくなったりしますよね(笑)」と雑談を挟み、さらに「通勤用ですか?それとも趣味で乗る感じですか?」と聞いたところ、「ちょっと前にバイクを手放して後悔してて…」と話が一気に広がり、その日に注文書をいただくことができました。
仮説力を鍛える日々の習慣
- 商談後、必ず「自分はどんな仮説を持って接したか」をメモする
- 成約・失注の理由を“仮説の当たり外れ”で振り返る
- よくあるお客様のパターンをチームで共有する
仮説力は一朝一夕で身につくものではありません。
日々の観察と振り返りの積み重ねが、自然に「刺さる提案」につながっていきます。
まとめ|仮説を持つ営業が信頼を得る
「話を聞いてから考える営業」では、受け身のまま終わってしまいます。
「仮説を持って聞きにいく営業」は、会話の主導権を握り、短時間で信頼を得られる。
売れる営業マンが当たり前にやっている“仮説力”。
ぜひ、明日からの接客で意識してみてください。
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