でも、それができない新人が多すぎる理由とは?
■ 「営業は聞くことが大事」──それ、分かっている“つもり”になっていませんか?
「営業は話すより聞くことが大事」
これはもはや営業職にとって“常識”ともいえるフレーズです。多くのビジネス書にも書かれており、SNSでも営業の心得としてたびたび登場します。
でも──
実際に現場で新人教育をしていると、「聞く営業」が全然できていない場面に何度も直面します。
たとえば…
- 相手のことを何も知らないうちに、いきなり商品の話を始めて撃沈
- 雑談をすっ飛ばして、カタログや価格表を出してしまう
- お客様が発した“ヒント”を聞き逃して、自分の話を続けてしまう
そして、結果的に契約は取れず、「あのトークが悪かったのかな…」と自分の話し方ばかりを反省する。
でも、それではいつまでたっても改善されません。
■ 「聞けない営業」が生まれる最大の原因とは?
新人営業が“聞けない営業”になってしまうのには、明確な理由があります。
それは…
相手のことを知らないまま、「刺さる提案」をしようとしているから。
──そんなの、エスパーでもない限り無理です。
たとえるなら、
🎯「的の場所もサイズも分からないまま、射的を撃ちまくっている」ようなもの。
どんなに腕が良くても、構え方を直しても、そもそも「的」が見えていなければ当たるわけがないのです。
■ 営業の第一歩は「話す」ことじゃない。「探る」こと。
成果が出る営業は、まず「相手の背景」を探ります。
- どうして来店したのか?
- 何に困っているのか?
- どんな未来を期待しているのか?
ここを聞かずに提案するのは、暗闇の中で矢を放つようなものです。
だから最初にやるべきことは、
「話す」ではなく「探る」ことなんです。
■ 現場でありがちな“話しすぎ営業”の実例
私が店長として見てきた中で、「話しすぎ」で失注したパターンは無数にあります。
● ケース①:「とにかく人気車両を紹介」して撃沈
→ お客様は「取り回し重視」だったが、それを聞かずに大型モデルを延々紹介。結果、「大きすぎて怖い」と断られ終了。
● ケース②:雑談せず、すぐに見積もり提示
→ お客様は「まず情報収集したいだけ」。警戒されて、早々に退店。
● ケース③:「自分のおすすめ」を熱弁
→ 相手が求めていたのは“家族も納得できる選択肢”。視点のズレで提案が刺さらず…。
共通しているのは、「お客様が何を考えているのか」を知らないまま、持ちネタをぶつけている点です。
■ 聞ける営業になるための、実践ポイント5選
ではどうすれば、“聞ける営業”になれるのか?
ここからは、私が実際にスタッフ育成で使ってきた5つの実践ポイントをご紹介します。
① お客様が「何をしに来たのか」を必ず確認する
これは全てのスタートラインです。
- 購入目的か?情報収集か?
- 比較検討中か?すでに候補は決まっているのか?
- 自分用か?家族のためか?
これが分かれば、雑談の仕方も、提案の切り口も全く変わってきます。
② 「言葉」よりも「背景」に注目する
お客様の発言をそのまま受け取るのではなく、「なぜそう思っているのか」まで深掘るのがポイントです。
例:
「長距離も走りたいんですよね」
→ → 「なぜ?」(→友人とツーリングが趣味)
→ → 「どこに行く予定?」(→山道が多い)
→ → 「なら軽量で登坂に強いモデルが合いそうです」
こうして、「発言」から「本音の背景」にたどりつくと、提案の精度が一気に上がります。
③ 雑談しながら情報を拾う
構えて質問しなくても、雑談の中にヒントは山ほどあります。
「今日は車で来られたんですね」
「お子さんいらっしゃるんですか?」
「バイクは今までも乗られてました?」
自然な会話の中で、お客様の属性やライフスタイルが見えてきます。
④ 全身で「観察」する
聞くのは「耳」だけではありません。
営業にとって“視覚情報”は最大のヒントの宝庫です。
- 乗り物(高級車?軽?)
- 服装(カジュアル/アウトドア系/ブランド)
- 話し方(落ち着き系/せっかち系/警戒心強め)
こうした情報をもとに、トークの“温度”や“スピード”を調整するだけでも、相手の反応はガラッと変わります。
⑤ 「聞いたこと」をちゃんと提案に反映する
「聞いて終わり」では意味がありません。
聞いた内容を“提案に反映”してこそ、信頼は生まれます。
たとえば──
✕「これ、今キャンペーン中でお得なんです!」
○「通勤にも使いたいとおっしゃっていたので、燃費がいいこのモデルをおすすめします」
お客様は「自分の話を聞いてくれていた」営業に信頼を寄せます。
■ 聞く力を磨けば、営業はもっと楽になる
話す営業は疲れます。常に自分からボールを投げ続けなければならないからです。
でも、聞く営業は違います。相手のボールを受けることで、自然と商談が進んでいくからです。
そしてなにより、「この人、ちゃんと自分の話を聞いてくれている」と感じたお客様は、営業に対して心を開いてくれます。
そこから生まれるのは、“押し売り感のない信頼関係”。
それこそが、長く続く営業の土台になります。
■ まとめ|「聞く営業」は、最も地味で最も強いスキル
営業という仕事は、単なる会話の仕事ではありません。
相手の本音を聞き取り、汲み取り、必要な提案をする。
そのためには、まず自分のトークよりも「お客様の言葉」に耳を傾ける必要があります。
- 何を求めているのか?
- どんな背景があるのか?
- 何に不安を感じているのか?
これらを丁寧に拾い上げ、ひとつひとつの提案に“意味”を持たせる。
それができるようになったとき、あなたの営業はきっと大きく変わります。
あなたも今日から、“聞く営業”を始めてみませんか?
最初はうまくいかなくても大丈夫。意識を変えるだけで、営業の景色は一変します。
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